2014/03/21

ウクライナお気の毒

ロシアのクリミア併合は悪い事であるという論調が日本のメディアの主流だ。欧米はこれに対して経済制裁を行っていて、ロシアに対して強硬派でいるアメリカやイギリスの動きが主に伝えられている。これは日本のメディアが国民に、国際社会はロシアに制裁を行っているという印象を与えたがっているようだ。政府見解もそうだが、親米であることは日本メディアにも貫かれている。

クリミア自治共和国が住民投票によってロシアへの編入を決めた。これを受けてロシアもクリミアの編入を受け入れたというのが現実の流れ。この住民投票への投票率は83%と高く、投票の約97%が編入に賛成票だった。しかし、アメリカはこれを国際法に違反した投票であると、この投票を認めていない。

今回のウクライナの親欧米派によるクーデターはアメリカから支援を受けて行われている。しかし暫定政権に座っているのはネオナチと呼ばれる過激な民族主義者。ロシアにも信頼はないが、それと同じくらいウクライナ暫定政権も信頼がない。

人種差別的な民族主義は、本来アメリカが否定すべき存在なのに、何故かウクライナではこれを支持している。親露政権を倒すというのはアメリカの国益に適う行為だろうけれど、使っている駒が悪すぎる。おかげで、ウクライナ周辺国家も暫定政権には懐疑的で様子見だ。

EUも一枚岩ではなく、ギリシャやキプロスはロシア制裁に反対している。スペインやブルガリアも消極的だという。EUの中心的な立場にあるドイツも、実は制裁などしたくないというのが本心。よって、アメリカがロシアに対して軟化すれば、EUは意外にあっさりとウクライナ問題から手を引くだろう。

ウクライナ暫定政権が長期化すると、きっと民族浄化などの弾圧が行われる。ひいては内戦に発展するかも知れない。ウクライナ財政はIMFが支援するというが、IMFは発展途上国などで、国家財政を緊縮させて国民生活を困窮させている。果たしてウクライナがその困窮に耐えられるのだろうか。

日本のメディアは、今回の併合劇をプーチン大統領の暴挙と報道するが、暴挙と似つかわしくなく、相当ロシアは優位に立っている。暫定政権によるウクライナの内政が破たんすれば再び親露政権が生まれ、結局のところロシアは、アメリカが仕掛けてくれたおかげでうまくクリミアを手中にすることが出来たということになる。

ロシアはシリアでも優位に立っており、シリアの反政府勢力を支持したアメリカは敗北色が強い。アメリカの外交はちょっと強引過ぎて失敗が多いように思われてならない。もっとも、軍産複合体から見れば、シリアで金儲けが出来なくなりつつある昨今、ウクライナはいい金蔓になるという思惑か。


いずれにしても、平穏に暮らしたい一般のウクライナ人にとっては大変お気の毒な状況だ。聞けば、欧米とロシアの間で揺れ動き、不安定な政情にあるウクライナの経済成長は極めて鈍いのだそうだ。大国間の政争の為に駒扱いされる国、ウクライナの悲劇。歴史的な一幕を見ている訳だが、教訓も多い。