http://www.swissinfo.ch/jpn/detail/content.html?cid=28876590
スイス人口に占める外国人の割合は約22%。それでも増加傾向にあるという。スイス全土の刑務所には6084人の囚人がいて、そのうち70.2%にあたる4272人が外国人だそうだ。
こうした背景があって、スイスの極右政党SVPが法律改正の為の国民投票(イニシアチブ)に持ち込んだ。そして投票の結果、これが承認された。
http://www.swissinfo.ch/jpn/detail/content.html?cid=28901270
スイスの治安悪化は、旧ユーゴからの難民によって引き起こされているとか、益々増加する東欧からの移民が犯罪増加を生んでいるという批判があって、こういう人達がターゲットになった。しかし、法律は一律に外国人の排斥を生む。
スイスはEUとの労働協定があって、恐らくEU市民はその協定の範囲内で優遇されるだろう。結局、この国民投票によって排斥の度合いを強めるのは、EU域外出身の外国人となる。
もう十年ほど、外国人の人権に注意を払っているれど、エスカレートする外国人排斥の動きによって、治安が良くなっていくかというと、そうはならない。締め付ければ締め付ける程、その集団は自己防衛のため結束し、強固になっていく。
ただ、スイスの今回の国民投票の場合、日本と比較すると、まだ温和なものとなっているのも事実。日本の場合は、1年以上の懲役となる外国人犯罪者は一律国外追放だから。
この世界不況の中、経済的に安定しているスイスに来たい、という外国人はますます増加していくだろう。そこに門を閉じようとする気持ちは理解できなくもない。金持ちの外国人は歓迎、しかし貧乏人や、無知、犯罪者はいらない。
スイスは金持ちの外国人や能力のある優秀な外国人を結構集めているけれど、職を求めてやってくる移住労働者は、通常資本など持っていない。あるのは体だけ。学歴やコネがあるなら別だし、配偶者にスイス人がいたら、もうそれだけで外国人の中でも特別な存在だ。外国人グループの中の上層階級とでも言えそう。もっとも、優秀な外国人がスイス社会で影響力を強めたりすれば、それも軋轢を呼ぶ。ドイツからの移住者への反感なども、そんな要素が見え隠れする。
私も、自覚はないけれど、スイスでは恵まれた外国人の一人だろう。それでも、こうした排斥の動きはあまり歓迎できない。スイスの町を歩く私は、一見中国人っぽい、異邦人だ。異邦人に向けられる一律の視線は暖かいものではない。結局、社会問題を弱い立場の外国人のせいになすりつけているだけで、その究極にはナチズムが見え隠れする。気分的な要素が強いけれど、スイスも住みにくくなる、そんな気がする。(家族で外国人なのは私だけだが・・・)
スイス国籍を取得すると、考えが少し変わるかも知れない。スイス社会に馴染まない外国人を批判し、SVPを支持するスイス帰化者も多いと聞く。スイス国籍を取得したのに、出身国による差別を受ける、だから問題を起こす外国人(同邦)には来てもらいたくない。そんな心情があるようだ。
確かに、日本の暴力団関係者がスイスにマネーロンダリングにやって来た、なんてニュースがあれば、眉を顰めてしまう。
(注意)自分の意思でスイス国籍を取得すると、日本の法律により日本国籍を自動的に喪失します。(国籍法第11条)