スイス鉄道の列車は、国鉄私鉄をあわせて、機関車が客車をけん引する列車が多い。一見電車に見えても、駆動部は先頭、あるいは後尾にあるのみというものもある。本来、進行方向の先頭に機関車あるいは駆動車があるべきだが、進行方向がよく変わるスイス鉄道にあっては、いちいち機関車の切り離しを行っていては効率が悪い。そこで、列車の中には一方に機関車をつけて、もう一方は客車に運転室を設けたものという構成で運行している。特に、この編成は急行列車や長距離列車に多い。氷河急行も、電車の様に見えるが、機関車がけん引するタイプの列車で運行されている。
因みに、スイス国鉄には特急に相当する列車もあるのだが、そういう名称は使われておらず、インター・シティといった名称で呼ばれている。スイス国鉄の列車には特急や急行の料金はなく、乗車券だけで乗れる。今回事故のあった「氷河急行」(特急と呼ばれているが、訳すると急行でしかない)は私鉄が運行する列車で、全席指定の為、指定料金が必要となっている。こうした指定料の必要な列車には、氷河急行とベルリナ急行がある。また同じく私鉄で、スイス南部ロカルノからイタリアのドモドッソラを結ぶ列車にパノラマかーが導入されていて、その列車に乗ると、パノラマ料金がかかる。
機関車が進行方向の先頭についていた場合、中間車両で脱線事故が起きてもさほどの被害は起きないだろうが、機関車が最後尾についていて、列車を押す様な形で走行している場合、中間車両で脱線事故が起きると、その被害は拡大傾向になるだろう。なぜなら、脱線した車両は走行不能な訳で、急ブレーキをかけているに等しい存在なのにも関わらず、後ろから機関車が押しかかるからだ。車両は押しつぶされるか、あるいは大きくはじけ飛ばされるしかない。
今回の氷河急行の脱線事故も、写真から見るとその様な事が起こっているのが見受けられる。恐らく機関車が最後尾についていたのだろう。事故現場は氷河急行が売りの山岳区間からは外れた所で、そもそもこの氷河急行はたいしたスピードで走っていない。しかし、事故現場は、どれだけスピードが出ていたのだろうと思うくらいの惨状となっている。
機関車が列車の最後尾にあって、列車を押すように走行する場合、脱線事故の被害が悲惨となる確率は格段と増す。また、運転席と機関車が別であるというのも事故の要因を増やす事となる。電気的な制御信号を運転側から機関車に伝えなくてはならない、もしそれが故障したらどうなるだろうか、客車部分にはブレーキがかかっているのに、機関車は押し続けている、などの異常運転が発生し、列車は確実に脱線するだろう。
スイス鉄道の(国鉄を含めて)主要列車は、この様な編成になっているから、必ず一方の区間は機関車最後尾の運転となっている。スイス鉄道の事故などはあまり聞かないし、ヨーロッパ鉄道の中でスイス鉄道は最も優秀だろうとは思う。しかし、私もよくインター・シティなどを利用しているので、ちょっとであるけれど心のどこかに不安感を持っている。この様な編成の場合、列車の真ん中辺りが大きな被害に遭う確率が高いので、不安だったら列車の先頭部分や後尾部分に乗った方がいいだろう。一等車はだいたい先頭部分か後尾部分についているので、そういった意味でも安心かも知れない。もしかしたら、一等車ってそれを見込んでいる???
以前、アルプスの列車のトンネル内の火災で
ReplyDelete日本人が多数亡くなられたのは、スイスではないのですね?
今回の事故は列車の高さが高く、バランスが悪いので
カーブのところで浮き上がったことが脱線の理由だと
テレビで言っていましたが、スイスの見解は?
どちらにしても、この程度のスピードの脱線で大事故になるのは
のりさんのコメントを見なければ理解できないところでした。
のりさんもお気をつけて。
あれは確かオーストリアでした。
ReplyDelete脱線の理由についてまだスイス政府は正式なコメントを出していません。というか、調査がこれから始まるようです。
元エンジニアから見ると、列車運行に際しては当然異常が起きた場合の緊急停止システムなど、複数のフェール・セーフシステムがあるはずなんですね。
今回の事故は、そのフェール・セーフの全てをすり抜けて発生したのですから、きっと色々な要因が重なった結果なんだろうと想像しています。
事故原因の透明な結果発表が望まれます。
今日バーバラから電話がかかって来て、話をしたのだけれど、我が家のもっぱらの関心は列車事故より、ここ数週間の猛暑でした。スイスも相当暑かったそうで、スイス南部では36度を越えたとか。そのスイス南部にいつも我が家は夏のバカンスに行くのですが・・・・。笑
スイスの家は、冬の寒さに耐えられる作りをしているので、日本並みの夏の暑さが来たら、正直耐えられません。我が家には扇風機すらないし。当然、公共の交通機関にも冷房車などないわけで、この猛暑でスイス鉄道を利用するのは、ある意味別の地獄です。
スイス南部で起こったそうですが、列車内の気温が50度を超えたそうです。しかも、窓の開かない列車もあります。あまりの暑さに、あるご婦人が耐えられず、列車の窓を破壊して、その列車が緊急停止したなどの事件が発生したそうです。
でも、日本ではもう何十人も暑さで死んでいると言ってやったら、びっくりしてました。
夫婦の会話は電話?(笑)
ReplyDelete危機感が感じられる(爆)
玉キングです。
ReplyDeleteのりさんのこの記事で、僕も今回の事件のことがよく理解できました。やっぱ僕は一等車に乗るようにします(笑)
そういえば、先日、ドイツの電車のクーラーが壊れて、乗客が大被害にあったというニュースがありました。その車両は窓が開放できない構造なので、クーラーが壊れたらやっぱり50度くらいの温度になるそうでした。記憶で書いてるので不確かかもしれませんけど、そういうニュースだったと思います。
jeffさん
ReplyDeleteわかるぅ?苦笑
でも、スイスと日本で電話以外に・・・
メールだったら、もっと危機かも。爆
玉キングさん
NYじゃ列車乗る機会もないでしょう。笑
アムトラックって、乗ったことないんですが、一度乗ってみたいですね。
ドイツもそうですが、そもそも夏でもクーラーなど必要なかったんですね。ところが近年の夏はクーラー必須となりました。冬の寒さに耐えられるように保温効果と機密性の高い作りになっていますから、この猛暑にクーラーがなければ地獄ですね。
今週はいく分涼しくなったそうです。