2010/04/27

フランス、ストラスブール、ロマ人と多文化共生の陰

 8月8日、曇り時々雨。今日は最終日。ランスからストラスブール、フライブルグ、ドナウエシンゲン、バーゼルと通ってベルンに戻る予定。なお、バーゼルは既にスイスの都市で、何回も訪れているので単に通過しただけ。6時半に起床、朝方市内を散策し、8時半にランスを出発した。

 ランスからストラスブールまでは高速ですいすい走る。ただし、フランスの高速道路は有料で、今回のフランスでの高速代は41ユーロ(約5900円)にのぼった。高速区間は630キロ。それでも日本の高速料金よりは半額程度安いのだろうけれど、スイス、ドイツ、チェコと高速料金が無料(ただしスイスは年間40フランのチケットが必要)だったので、とても高く感じる。

 ストラスブールはアルザス地方の中心都市。このアルザス地方はフランス領になったり、ドイツ領になったり行ったり来たりしている。しかし住んでいる人はアルザス人を自負していて、ドイツ語に似たアルザス語を話す。アルザスには現在欧州議会が置かれている。

 町の中心部には古い町並みが残されていて、アルザス独特の木組みの家が沢山残されている。この木組みの家はアルザスからロワールにかけてよく見ることが出来るが、ドイツにも多い。スイスにも特に東側で多い。どうやらドイツ東南部を中心として広がっているようだ。

 今回は旧市街をちょっと散歩した。雰囲気はなかなかいい。町の中心にある大聖堂は偉容を保ち、ストラスブールのシンボルとなっている。ライン川に続く水路が発達していて、観光船が行き来している。しかし、水路脇を歩き、川沿いの古い家並みを見学するのもまた素晴らしい。お昼時だったので、沢山の人がレストランのテラスで食事をしていた。ワイングラスには、地元のアルザスワインが注がれている。

 ストラスブールの外れで信号待ちしていたら、ジプシーの女性がいきなり車のフロントウィンドーを洗い始めた。断る暇がなかった。無論無視も出来るのだが、あとで車を蹴られたりするのも嫌なので、チップに2ユーロ渡す。1ユーロもやれば十分なのだろうが、2ユーロコインしかなかったのだ。涙 こういうジプシーをフランスやイタリア、スペインでは見るのだが、ドイツ、スイス、オーストリア等ではみかけない。今回行ったチェコやポーランドでもみかけなかった。

 ストラスブールは歴史的に国が動くなど辛い経験を持ち、独自の文化を保ち続けるアルザス人の首都であることから、多文化共生を標榜するEUの議会が設置されている。その様な町だから、ジプシーを見ることもあるのだろう。しかし全然覚悟が出来ていなかった。

 ジプシーという呼称には差別的な意味があるということで、現在は「ロマ」と呼ばれる事が多い。ロマ人はナチス虐殺の対象にもなっており、こうした事もあって中欧ではロマ人をあまりみかけないのかも知れない。彼らは北インドから渡ってきた放浪民族の末裔なんだそうだ。しかし放浪先の様々な民族と交わっており、日本人にとってはもはやロマ人を外見で識別するなど無理な話だ。

 彼らは移動型の生活習慣をもっているので、定住型の文化を持つヨーロッパ人と様々な摩擦を起こした。これがヨーロッパにおけるロマ人差別の原因となった。彼らの文化においては、放浪が当たり前で、それこそが人生の楽しみなのだろうけれど、居を構え職業訓練を積んで一人前となるヨーロッパの社会経済体制には馴染まない。

 彼らが職業としていた金属加工、手工芸、旅芸人などの機会も徐々に狭められて来ていて、ロマ人の生活環境は厳しいという。彼らが放浪を続ける限り、西洋型近代国家の仕組みは彼らを弾き出す。彼らは居住国家で定住し、文化統合されることを強いられる。それを拒むロマ人は今後も苦難が続くだろう。なんとなく哀れでもある。あの2ユーロは詐欺の様に取られたものではなく、神に捧げたものと思った方がいい。

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