2010/10/15

息子と行った黒部・立山2

10月5日
朝方、立山連峰には雲がかかっていた。果たして眺望が期待できるのか不安だった。天気予報は曇り、午後から雨になるとの事だった。しかし、天気予報は標高500mに位置する立山市内のもので、標高3000m級の立山連峰に完全に当てはまるものでもなかった。現に昨日の夕刻、立山市内は曇りでも、ここ室堂は雲の上に出て、晴れていた。

もしかしたら、一時雲が切れるかもしれない。その期待にかけて雄山に登る事にした。黒部・立山といえば人生のうちで何回も来られる所ではない。それに一ノ越には雲がかかっておらず、一ノ越の眺望だけは確実に拝めそうだった。一ノ越からだと、昨日は拝めなかった立山の東側の眺望を拝める。それだけでも価値のある登山だ。

みくりが池温泉を出て、立山室堂山荘に向かう、途中には血の池などというおどろおどろしい名前の池がある。室堂山荘は日本で一番古い山小屋らしいのだが、建物は新しかった。ここから一ノ越まで、整備された登山道を登る。途中何人か登山者を追い抜いた。私より高齢の方々だった。流石に立山、早朝から登山者が多かった。「若い人は早いねー」などと言われたりしたが、そう言われてもちょっと微妙な気分になってしまう。私は、まごうことなき中年おやじだし・・・。

一ノ越は標高2700m。雄山3003mと浄土山2831mの間にある鞍部で、山小屋がある。およそ1時間で到達した。みくりが池温泉は標高2400mの所なので、300mを登った事になる。序の口だ。それに道も良く、難なくついてしまった。眺望も良かった。10月初めなのに、2700m地点はもう寒かった。厚手のシャツを着ていたが、冷たい風は、シャツを突き通して肌を刺した。
一ノ越から雄山山頂は見えない。しかし、山の上にあった雲が切れかかっていた。これはチャンスだ。今から上がれば、ほんの一時でも眺望が期待できると思った。そこで小休止を切り上げて、すぐに雄山へのアプローチに取りかかった。それに体が冷めないうちに登りにつきたかった。雄山へのアプローチは、胸を突く岩場だった。標高2000mを超える高地では、息が上がる。高山病にも気をつけなければならない。

一ノ越から雄山山頂の中間地点に平らになる場所があった。そこからは雄山山頂の山小屋が見える。あと一歩だ。そして、この平からの眺望が素晴らしかった。雲は既に切れていた。眼下に室堂を見下ろし、そして立山連峰、浄土山、北アルプスの山々を展望出来た。この平から上が、また胸を突く岩場の直登だった。

息は上がるけれど確実に標高を稼ぐ。山頂に近付くにつれ、風の冷たさが肌をさす。厚手のシャツ1枚では寒い。汗をかく程の登山なのに、体が冷えて来る。山肌には霜がへばりついていた。手が凍る。じっと耐え、ひたすら登る。そして、ついに雄山山頂の鳥居が見えた。標高3003mの山頂だ。寒さで歩調が早まったのか、一ノ越から45分くらいで登り切る事が出来た。思い返せばあっけなかった。しかし、安全側に予定を組むのが登山の鉄則。今まで山で恐い思いを何回もして来ているし、息子を連れての山登りでは、安全に安全を見なければ、あとで女房から雷が落ちる・・・。

雄山山頂からの眺望がまた絶景だった。室堂を始め、立山市の平野部まで見渡せ、立山連峰の主峰の一つ、剣岳が近くに迫っていた。残念ながら黒部ダム方向は雲に覆われてしまっていたが、眼下の峰から湧き起る雲海はまた別の、神々しい様な美しさを放っていた。雄山の山小屋越しには立山カールが見えた。ここは日本にあった氷河の跡だと言う。雄山は立山信仰の山で、頂上には鳥居と祠がある。かつては女人禁制だったそうだ。

頂上は寒かった。厚手のシャツの上に、セーター、そしてレインコートを着込む。早く体を動かさないと、寒さで凍えそうだった。ひとしきり写真撮影をして下山を始めた。山小屋でちょっと暖まりたいと思っていたのだが、この日山小屋は朝に店仕舞をしてしまっていた。朝に店仕舞とは、一体いつ営業するのだろう。

私たちは朝の7時に温泉小屋を出て、9時前に立山頂上についていた。この時間が一番雲が少なく眺望が良かった様だ。大変運が良かった。下山を始めると、多くの雄山登山者とすれ違った。どうやら私たちは早い出発の組だった様だ。私たちより先に頂上にいたのは4人のパーティだけだったし、雄山の登りの途中で下山者にすれ違う事もなかった。私たちが下りる頃から、山に少しずつ雲が出始めていた。

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