2011/10/25

スイスの右傾化後退する

先週の連邦議会総選挙で、これまで議席数を伸ばし続けていたスイス国民党が議席数を減らした(7議席減)。このスイス国民党とはスイスで最も右翼に属する政党で、EU加盟反対、国連加盟反対、移民排斥、などなどを訴えている。もちろん保守政党だけあって原発も擁護派だ。私としては、国民党の後退は正直歓迎したい。私も移民の一人なのだから。それに脱原発派だし。

しかし、国民党が議席を減らしたとはいえ、未だ議会第一党の地位を保っている。が、新聞などの論評を読むと、それでも極端な移民排斥などの政策は取りにくくなったという。そもそも第一党といっても、議会の過半数を占めているわけではなく、単独政党として政権を担える地位にはいない。

この国民党には、スイスの極右ポピュリストとして名高いブロッヒャーという政治家がいる。彼はオーストリーの極右ポピュリスト、ハイダーに次いでポピュリストとして大統領になりそうな雰囲気でいた。しかし、第一党の代表的な存在のブロッヒャー氏ですら、他党の結束の前に敗れ大統領にはなれなかった。スイスは右傾化したが、極端な右傾化までは望まなかったということだろう。何事も極端は嫌うようだ。

このスイスの右傾化の背景には、その間に行われたスイスの国連加盟やシェンゲン協定の参加、EUとの自由労働協定締結などの、一連の国際化の背景があってのことだろう思う。永世中立と言われたスイスだが、国際化の波に飲まれ、EUや欧州諸国との連携を強めざるを得なかった。しかし、そうすることで、人口が700万人程の小国スイスが、ドイツやフランスといった大国に囲まれる中で、独立を、中立を保っていられるだろうか、そうした不安感がスイスの右傾化を後押ししたのだろう。

また、今回の国民党の敗北には、第一党としてスイス・フラン高を防ぎきれなかった事に対する失望感があったようだ。現実の経済的な危機にあって無能をさらけ出した。移民排斥だけを訴えていたところで、肝心の経済は良くならない、と失望された。反対に議席数を伸ばしたのは、原発廃止などの環境問題を掲げ、現実的な自由経済路線を標榜する中道小政党だった。

極端よりも現実路線。これはスイスらしい気がする。右に振れていた振り子が戻り始めた。そして、スイスでの原発廃止の流れはもうせき止められないところに来たようだ。

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