カダフィ—大佐の後継者有力候補で、二男のセイフイスラム・カダフィ—氏が政治活動中止、というニュースを見て、突然リビアの国家元首が何で「大佐」なの?を調べる気になった。
何でカダフィ—大佐なの?は、今まで不思議に思ってはいたのだが、かといって調べる気にまでなっていなかった。リビアに対する私の関心なんて、こんな程度だ。因みに、リビアとスイスは険悪な関係になっている。殆ど国交断絶に近い状態だ。
事の発端はカダフィ—大佐の5男ハンニバル氏のジュネーブでの暴力沙汰事件。この時ハンニバル氏は外交官身分だったので不逮捕特権があったのに、ジュネーブ州警察は逮捕してしまった。父親のカダフィ—大佐は激怒。スイス向けの石油は止めるわ、スイス製品は禁輸にするわ、在リビア・スイス人の二人を人質に取るわで応酬。国連総会で、スイスは解体されるべきなどと極端な発言もした。
その後、スイスの大統領がリビアに電撃訪問して謝罪し、人質解放を求めたが、結局失敗。大統領の面目は丸つぶれ、スイス国内でも激しい批判が巻き起こった。次いでスイスはリビア人の入国を拒否する処置を取るなど、双方の報復がエスカレート。リビアの旧宗主国イタリアが仲介に入るなどして、現在紛争は収まりつつあるけれど、両国の関係は完ぺきにこじれた。永世中立国スイスも、紛争当事国になるということだ。
この、カダフィ—大佐。国家元首でありながら、政府の役職は何もない。あだや軍人でもない。なのにも拘らず、未だ世界はカダフィ—大佐(カーネル・カダフィ—)と呼ぶ。因みにリビアでもそうらしい。表面的には全く奇妙だ。
カダフィ—大佐は、実質的な独裁者であるけれど、リビアは直接民主制の社会主義国家で、首相も大統領もいない。首相に近い存在は全国人民会議の書記。全国人民会議の下位にある基礎人民会議は国民すべてに参加資格があるけれど、これは建前の事らしい。仮に一般国民が参加しても発言は制限されている。そしてこれら会議の議決は最終的にカダフィ—大佐の承認なくしては実施されない。そういう慣例になっている。
もともと憲法などない国だから、慣例は法より重い。行政上のいかなる役職がなくとも、こういう慣例になっているから、彼は隠然と独裁者であり続けることが出来る。
カダフィ—大佐はクーデターによってリビアの実権を握った。その時の身分は陸軍大尉。彼の尊敬する人物がエジプト独立の立役者、故ナーセル大統領で、陸軍大佐の身分から大統領になったことから、カダフィ—もクーデター後大佐に昇進する。大佐の英語名カーネルには指導者という意味もあるので、このクーデターの時の初心を忘れない為と、国家の指導者という地位を示すために、以降カーネルすなわち大佐と称しているのだそうだ。
日本ではカーネル・カダフィ—を「カダフィ—大佐」と訳しているが、リビアでは「指導者カダフィ—」と称されている。この受け止め方の違いは、その人物を小さく評価するか、大きく評価するかの違いにあるのではなかろうか。
カダフィ—大佐は国際関係で様々な軋轢を起こしている。スイスもそうだが、隣国エジプトと国交断絶してみたり、パンナム機爆破事件では国連から経済制裁を受けた。エジプトの故サダト大統領をして「頭のてっぺんから足の爪の先まで狂った男」と言わしめている。
しかし、国政においては盤石な基盤を築き上げ、石油資源によって経済は潤っている。北アフリカ地域内に置いても、ダントツにGDPが高い。彼は反欧米を掲げ、かつ経済成長を成し遂げた功労者として国民からは支持を受けている。アラブの成功したポピュリストの一人といえよう。言動は過激であるけれど、イスラム教徒としてのある種の清廉さも有している。彼からは汚職や腐敗と言った煙は上がらない。
彼の息子たちも個性的な様だ。一番個性的なのは5男のハンニバル氏だろう。パリでも逮捕され、ロンドンでも警察沙汰を起こしている。彼の息子たちの中で、一番まともと目されているのが二男のセイフイスラム氏だ。外交的に父親のしりぬぐいに忙殺されて来たというセイフイスラム氏は、ここに来て政治活動をやめるという。改革派の旗手と目されていた氏の活動停止には保守派の圧力、そして父親との確執があったのではと憶測されている。
カダフィ—大佐はまだまだ健在な様だが、彼亡きあとのリビアはどこに行くのだろうか。私の目には、国家元首亡き後、粛々と政権が移譲されるシステムがリビアに構築されているとはとても思えない。
因みに、カダフィ—大佐は日本に好意を持っているとは言えないようだ。公式サイトで使用されている、カダフィ—大佐の背後に世界地図が描かれている画像には「日本列島」がないという。
あと、若い女性がお好きな様で、若い女性兵士をボディガードとして引き連れて行動しており、「カダフィ—・ガールズ」と呼ばれているのだと。70近いのに、おとこだね〜〜〜。笑
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