私のこの様な体験と今回のアメリカでの問題はいささか隔たりがある。でも確かに、急に加速などされたらたまらない。自分のミスで事故を起こすならまだしも、車の欠陥で事故を起こされ、死んでしまったら、死んでも死にきれない。
そこで色々調べたら、トヨタ車が北米で死亡事故を起こしているほとんどのケースがフロアマットがらみだということ。このフロアマットの取り付けが不適切だと、アクセルペダルにフロアマットがからまって、加速してしまうのだという。
公聴会で証言に立った女性の陳述によると、アクセルを踏んでいないのに車が急加速を始めた。ブレーキをかけたりギアをバックに入れたが加速は止まらなかった。時速160キロに達し、私は死ぬと感じ、最後の電話のつもりで夫に連絡した。ところが、車は徐々に減速を始め、時速53キロになってエンジンを切る事が出来た、とのこと。涙交じりにこう証言して、多くの議員が共感を示したという。
しかし私は強い違和感を覚えた。この証言からすると、私にはこの人がパニックになったとしか考えられない。だいたい時速160キロに達して、夫に電話と言うところがすごい。確かにアクセルを離してもなお加速していれば、私でも焦ると思う。だからギアをいじるのは正解だが、そもそも前進中の車でバックギアを入れる事が出来ないのはドライバーの常識ではあるまいか。アクセルが戻らなければ、ニュートラルに入れればいい。どんな状態でもギアをニュートラルに入れる事は出来る。そうした場合、エンジンが回転を上げるだけだ。当然車の速度は落ちる。ブレーキもかかる。それと同時にエンジンを切る。でも、多分そこまでは頭が働かないかもしれない。余裕を失い、一つの事をするのに精一杯になる事もあるだろう。
私が考えるに、このドライバーは確かに車を運転する事は出来るが、車の操作方法についての知識が乏しい。走行中に起こりうる不具合に対する対処能力がないから、何も出来ないで、しまいには夫に電話することしかできなかったのではないだろうか。
アメリカで運転免許を取る事はとても易しい。私が受けたルイジアナ州での試験では、筆記試験に合格した後の実地試験で、試験場の周りを1キロほど1周し、無事に帰還出来たら合格である。車の整備とか、緊急事態への対処とか、そうした事は全く考慮されていなかった。こうした易しい免許制度が事故を誘発したり、
予防対策の障害になるだろうことは想像に難くない。
ということで、私はすっかり安心してしまった。この問題は日本でも、そしてヨーロッパでも起きないだろう。何故なら、免許を得る過程でドライバーは自分の身を守る術を身につけているから。
顧客第一というのも大切だと思うが、顧客第一主義を過剰に求めると、ユーザー側が脆弱になる。そんな一面を垣間見た気がする。ユーザー側は車は壊れるもので、危ないものだという認識を強めた方がいい。
一方で、トヨタをアメリカ議会が叩く事については、どんどんやって欲しいと思う。日本でもやったらいい。メーカー側には顧客第一を当然の様に追求してもらいたいからだ。それにもし、日本でこの様な原因で死亡事故が起きたらなら、マスコミの格好の餌食になり、その攻撃たるやアメリカ以上のものとなっただろう。トヨタには不幸中の幸いだったかも知れない。
私は今回の問題でトヨタの品質が地に落ちたとは思わないし、恐らく多くの人間がそう感じていると思う。今回の問題で、私はトヨタからアメ車に買い替えようとは露ほども思わない。アメ車に買いかえれば、頻繁に起こる故障に悩まされるのは目に見えているからだ。
トヨタの品質も以前より低下したのかも知れない。しかし、依然アメ車よりは優れていると思う。トヨタをアメリカ議会が叩き、トヨタがさらに品質重視に向かうとすれば、これはユーザーにとってこの上なくありがたい事だ。それに、他のメーカーも同じ厳しさを課せられる事になる。トヨタユーザーだけでなく、全ての車のユーザーにとってありがたい事だろう。
GMの自滅によって、トヨタは世界一になった訳だが、世界一はとかく叩かれるだろう。それに品質重視なら、世界一に固執する必要もないはずだ。あの事業仕訳で蓮舫議員の発言が思い出される、「どうして世界一を目指さなければいけないのですか?二番三番だっていいんじゃないですか?」一番に固執するより大切なものがあるということだ。
世界一を目指さなければ、二番にも三番にもなれないという反論があったが、そんな競争原理で科学や技術が縛られるのも問題だろう。争う必要のない自分らしさ、そういう観点の方がもっと大切だと思う。
公聴会に出たオババの証言ですが・・
ReplyDelete>夫へ電話をかけたとき、「神の力が介在し」、車はすこしずつ減速して停止したという。
ブレーキは神の力で急加速はトヨタのせいっていうのも凄いなとw
これまたすごい発言ですね。
ReplyDelete証言の信ぴょう性が疑われてしまいますが、公聴会は政治ショーでしょうから、神様が出てきてもOKなんでしょうね。www
のりさんがアメリカで見て感じられたことを教えていただきたい。
ReplyDelete私が聞いているのは、一昔前のことなのかもしれないが、月曜日の工場の製品は使い物にならなないと言うことでした。
どこの国でも国民性が出てくるものですから、同じ機材をラインに設置しても違ったものができるのではないですか?
トヨタの信頼性は日本国民の部品製造から出てきているものだとは考えられないのでしょうか?
当時のアメリカを見たとき、正直この国は近い将来滅びると思いました。でも、そののちアメリカは持ち直したんですよね。ただ、結局それはかつての工業技術ではなくて、金融が引っ張っての事でした。
ReplyDeleteアメリカには色々な社会問題があって、著しいモラルの低下を感じていました。しかし、そうした社会問題を隠さずに指摘する声も上がっていて、それは大切な事だと思いました。そういう面では隠蔽型の日本より優れていると思っています。
まぁ、あの国は滅びないと後で思うようになりました。本当は地下資源が豊富にあるのに、世界が枯渇するまで温存しようとしていますしね。
工場の製品については、正直疑問に感じています。トヨタも日本だけで生産をしていたら、この様な問題を起こさなかったかも知れません。だって、アメリカでのリコールは全て北米産のもので、日本から輸出された車はリコール対象になっていません。
北米産の車は部品も北米の会社から調達していますしね。今回のトヨタの件で、韓国の自動車メーカーが漁夫の利を狙っているとも言われていますが、同じような懸念を抱いているんだそうです。
日本車の様に車が売れて行けば、全て韓国国内で製造している韓国メーカーも、いずれは北米で自動車を生産しなければいけなくなる。その時、韓国並みの品質を維持できるのか、これは未知数だ、と。
ある北米在住のカージャーナリストは、トヨタでも北米産のものは買わず、日本から輸出されるものを買うと書いていました。やっぱり違うんですと。
でも、それも困ったものです。同じトヨタなんですから、同じものをどこでも作ってもらわないと。そりゃ、日本に北米産のトヨタが出回る事はないでしょうが、ヨーロッパではと考えると・・・・・。